今回お預かりした時計は、ジャガー・ルクルトの手巻き式クロノグラフです。ジャガー・ルクルト社は1833年創業で、自社一貫生産体制(マニファクチュール)を築き上げたスイスの老舗高級時計メーカーです。この時計には名機と呼ばれるバルジュー社のCal. 72というムーブメントを搭載しています。お預かりした時、バルジュー72のメンテナンスに携われると、正直とても心躍りました。
状態としては、通常の時計機能は問題ありませんでしたが、クロノグラフの時積算計が不動、そして帰零ができない状態でした。分解・洗浄・注油・組立のフルオーバーホールを行い、時積算計の油劣化による固着とリセットボタンの動きの悪さを解消しました。またメインスプリング(ゼンマイ)について、外端近くに変形の箇所が見られたため今後を考えて新品に交換をいたしました。
外装につきましてはご相談させていただきました通り、風防のキズ取り、研磨を行いました。ケースにも小さなキズはありますが、おそらく70年もの年月を経たヴィンテージ品としては、そのままの方が風合いを感じて良いかと思います。
時間の精度としては、文字板上の状態で日差+約30秒と測定していますが、その他の姿勢差を考慮してその状態としています。ご使用される中でご要望があれば、再度調整をすることは可能です。パワーリザーブは実測で約40時間でした。
機械式クロノグラフは、時計に趣味を持つ者としてとても魅力的なものです。
今回搭載されているバルジュー72は機械式クロノグラフの中でも名機と呼ばれていると記しましたが、バルジュー72が搭載されているムーブメントの代表といえば、ロレックスの初期のクロノグラフ(コスモグラフ)デイトナ、ポールニューマン、またブライトリング ナビタイマー等があります。
バルジュー72の最大の特徴は6時の位置に12時間積算計があるということです。それまでの機械式クロノグラフは2インダイヤルだけでしたので、このムーブメントから現在でも基本となっている3つ目(秒針、分積算計、時積算計)のクロノグラフがスタートしたという、時計史に残るムーブメントですね。
一通りの手入れをいたしましたので、通常のご使用に関しては問題はないと思いますが、何分古い個体でありますので優しく取り扱ってあげると良いと思います。また非防水なので水分、汗などは気をつけていただくと不具合が避けられます。一年に一度ほどのクリーニングをお勧めします。
また何かありましたら何なりとご連絡ください。
このような貴重な時計のメンテナンスをさせていただきありがとうございました。
お預かり品 | ||
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メーカー/ Maker | ジャガー・ルクルト/ JAEGER-LECOULTRE | |
時計/ Watch Name | クロノグラフ/ CHRONOGRAPH | |
形式/ Model | ||
ムーブメント/ Movement | バルジュー72/ VALJOUX 72 | |
動力/ Power | 手巻き / Hand Winding | |
タイプ/ Type | 6針 / 6 Hands |
メンテナンス内容 | ||
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オーバーホール/ Overhaul | ¥33,000- | |
部品交換: ゼンマイ/ Parts: Main spring | ¥4,200 | |
風防キズ取り磨き/ Remove scratches and polish for windshield | ¥3,300 | |
合計(税込) | ¥40,500- |