お預かりしました時計、パネライ・ルミノールを分解確認したところ、ゼンマイが切れてしまっていたことと、そのゼンマイを入れる香箱と呼ばれている部品の歯車も一部欠けていました。そのため巻き上げが出来ず不動となっていたかと思います。部品取扱会社に問い合わせたところ、あいにく部品がありませんでしたので、イギリスの時計部品取扱のWEBサイトで探して調達いたしました。円安と送料もかかることから、部品代が少し高くなってしまいました。
どのタイミングでゼンマイが切れてしまったかは不明ですが、手巻式時計のゼンマイを巻く時は、リューズから手を離さずに巻き上げると、機械への負担が多少なりとも小さくなるのでお勧めします。巻き上げ時に手を離すと、リューズが反動で戻るのですが、その時に負担がかかります。
この時計に使用されているムーブメントは「ユニタス」と呼ばれていますが、パネライがかつてより搭載する手巻ムーブメント“ETA6497”のことです。ETA社はスイスの最大手の時計部品総合メーカーで、そのムーブメントは多くの時計に採用されています。ユニタス社もムーブメントメーカーですが、ETA社に吸収され、それで現在はETAの名前がついています。
パネライは1860年時計工房兼時計店、そして時計学校としてフィレンツェに誕生し、長い間イタリア海軍の納入業者として、特に特殊潜水部隊のための高度精密機器を納入していました。ルミノール、ラジオミールをはじめとする当時パネライが開発したウォッチは、何年もの間軍事機密扱いとされてきましたが、1997年にリシュモン グループの傘下に入った後、国際市場に参入しました。
このムーブメントは、パネライが正式に世界デビューを果たした1997年の時点で採用されていることからも、パネライの“メインエンジン”と言っても過言ではないでしょう。
実は私が時計修理の勉強をオンライン講座を通じて始めた時、一番最初に取り扱ったのがこのムーブメントでした。何度もオーバーホールの練習をしたムーブメントでしたので、久しぶりに携わることが出来て嬉しかったです。
また革ベルトにつきまして、ご要望いただいたものを取り付けました。HIRSCHはオーストリアの老舗時計ベルトメーカーで、パネライをはじめロレックスなどにも純正ベルトを供給しています。お選びいただいたモデルはモデナ・ブラックでカーフレザーにアリゲータ型押しとなっています。パネライの存在感によく似合うベルトかと思います。
オーバーホールに関しまして、分解、洗浄、注油、組立と行っていますが、もし何か不具合等があるようでしたら何なりとご連絡ください。
ありがとうございました。
お預かり品 | ||
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メーカー/ Maker | パネライ/ PANERAI | |
時計/ Watch Name | ルミノール マリーナ/ LUMINOR MARINA | |
形式/ Model | PB0567461 OP6727 | |
ムーブメント/ Movement | ETA 6497 | |
動力/ Power | 手巻き / Hand winding | |
タイプ/ Type | 3針 / 3 Hands |
メンテナンス内容 | ||
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オーバーホール/ Overhaul | ¥22,000- | |
部品交換:香箱車(ゼンマイ入)/ Parts: Barrel complete (Incl. Main spring) | ¥5,900- | |
部品購入:革ベルト/ Parts: Leather belt | ¥11,000- | |
合計(税込) | ¥38,900- |